知的好奇心が刺激されるという意味で大変おもしろい本である。題名はセンセーショナルだが、本書にはセンセーショナルという言葉は似合わない。本書は『Time : Its Origin, Its Enigma, Its History』の翻訳版である。まるで何冊もの百科辞典を詰め込んだような内容の濃さなのだが、軽妙にして洗練された著述とブラックユーモアでその骨太な内容を包み込んでいるために、内容の濃さをまったく負担に感じさせない。本物の「教養」とはこういうものかと思わせる。著者のアレグザンダー・ウォーは作家イブリン・ウォーの孫であり、父はコラムニスト、母は作家という作家一家に育った。マンチェスター大学で音楽を学び、現在はオペラ批評家、作家、漫画家、イラストレーターと幅広く活動をしている。この経歴と活動の幅広さが本書のテイストを醸し出しているのだろう。 本書は「起源」の章で始まり、章を追うごとに秒、分、時間、日、週、月、年…としだいに時間の「スケール」が長くなっていき、やがて永遠、原始の時、時と空間、そして「終末」の章で終る。時間のスケールが長くなるにしたがい、物理現象や自然現象との関係が深かった「時間」がやがて、宗教、政治、社会と強く関連するようになっていくのは興味深い。 我々は日ごろ、当たり前のように暦を用い、あまりに当たり前すぎて暦を改めて問題視することはほとんどないが、実は暦は古くて新しい問題である。現在の暦は毎年25.9秒のずれが生じるため、このまま使い続けると2800年毎にまる1日ずれが生じ、遠い将来に我々は暦から1日を削除しなければならないのである。現在の暦より優れた世界暦の導入が検討されていたが、1955年にアメリカの反対により見送られている。このような時間や暦に関する驚くようなエピソードが満載で、ゆっくりと楽しみながら読みたい1冊である。(別役 匝)
はまの出版
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