古来日本において、性は笑いであった
江戸時代に張形?単に書名への好奇心で手にとって見たが、あたり!であった。
著者の田中氏は法政大教授で日本近世文化の専門家。浮世絵の春画に描かれた張形を通して、江戸時代の女性の性意識を論考しようという趣向である。
江戸時代までの日本では性は豊饒であり、豊かさであり、祭りであり、聖なるものであったが、明治以降、性は西欧的価値観の輸入によって邪悪なものとなってしまった、と田中氏はいう。また、性行為を秘め事と考えるのは近代的な発想で、集団での「遊び」としての性も往々にしてあった、という。
田中氏の指摘するとおり、春画は大変ユーモラスである。笑えるのである。明るいのである。この感覚は確かに性に罪の意識をもつ西欧のものではない。フロイスの「ヨーロッパ文化と日本文化」などにも、性に奔放な娘たちの話がでてくるが、本書でやっと納得がいった。笑いとしての性。これが日本人の本来の性意識であったのだ。
図版が多く、しかもそのものズバリなので、若年者には刺激が強いかもしれない。が、本来の日本の伝統的性意識では「女子十三四才にして経水通じて淫欲盛んなるは天地自然の道理(p141)」だそうだから、中学生にでもなれば十分、一人前。隠すこともあるまい。
日本人の民族思想のバックボーンとはなにか、それが最近気になっていろいろと拾い読みしているが、性意識については本書ですっきり納得がいったように思う。性を後ろめたく思う意識もまた、民主主義思想などと同じく、明治以降怒涛の如く流入した欧米思想なのであった。
というような理屈は横においても、ともかく読んで面白い傑作であることは間違いない。ぜひお勧めしたい。
かなり正確な江戸の風俗研究
かつて(本書では江戸時代に絞って)、女性は張形を使って積極的に性欲の解消をしていたことを、浮世絵と当事出版された冊子を材料に解説した一冊。特に、張形が普及していた女性の階層と、浮世絵に書かれた内容のフィクション性に対する指摘は的を得ている。文字だけでなく図を豊富に掲載しているので、実際の張形の形や使い方も大げさな表現ではあるものの知ることができるのは理解の助けになっている。次には、さらに時代を遡り中世における張形について本を書いてもらいたいもの。
性文化論としてほんとうに面白いおはなしですよ。
とっても面白い研究ですやはり江戸の研究家 田中優子さんの本ですが、なんと張形の研究です。西洋では女性には性欲がないという、なんともおかしな神話がつい最近までまことしやかにささやかれていたのですね。それとは真っ向からぶつかるような、江戸春画の中の女性達は、自らの性欲を張形で解消!面白おかしく笑いとして愉しむおおらかさ。女性の性欲もあたりまえとしていた文化が日本にはあるのです。 しかし、江戸時代も後半になってくると、女性が自ら愉しむものから、男性が女性を責めると道具と成り代わって行く、、。 性文化論としてほんとうに面白いおはなしですよ。 それにしても床の置物としての張形はほんとうにユーモラスです。 牛の角でつくった張り形をまだらがいいだの、大きさがどうだの、春画のなかの女たちは楽しそうに、あれやこれやと選んでいます。その姿は本当におおらかというのか、なんというのか、西洋のマスターベーションへの罪悪感とはかけ離れた日本の性の文化を、また垣間見るという、ありそうで他には無い本、田中さんならではの本でございますよ!
奔放?
五年前に出た「張形 江戸をんなの性」の新書版仕立て直しだそうである。その際書いたとおり、内容としては興味深いが、「江戸の性は解放されていた」の類の江戸幻想がよろしくない。今回はそれが増幅されていて、たかがオナニーをしていた程度のことで「奔放」などという語を使っている。よけいな小細工をするから「フェミニズム媚び仕立て」の江戸幻想派代表の本になってしまっている。
徳川時代の女性たちの性生活が分かる本
『張形と江戸をんな』というタイトル通り、徳川期の女性たちが張形を、どのように用いたかというトピックに就いて書かれた新書です。 図版が多数掲載されている上に、読みやすい平易な文体で記されているので、年齢や性別に関係無く気軽に娯しめる作品です。
洋泉社
江戸の恋―「粋」と「艶気」に生きる (集英社新書) 江戸の性愛術 (新潮選書) 新潮選書 江戸の閨房術 (新潮選書) 江戸を歩く (集英社新書ヴィジュアル版) 江戸の春画―それはポルノだったのか (新書y)
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