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モンゴル帝国の興亡〈下〉―世界経営の時代 (講談社現代新書)
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| ジャンル: | 歴史,日本史,西洋史,世界史
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| 人気ランキング: | 201201 位
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近代を開いたモンゴルの遺産
上巻においてモンゴル帝国はユーラシア大陸の相当な部分を軍事的に征服した。
下巻では、これを受けて、その世界史システム経営について明らかにし、またその後裔となる勢力がいかに後世の世界史に影響力を及ぼしていったかをみていく。
その世界支配システムは、陸と海にまたがる壮大なネットワークにもとづくもので、軍事、経済、経済を合理的に管理した。それは後の近代的な世界システムの先駆けに他ならない。また、モンゴルはゆるやかに世界史の表舞台から消えてゆくが、その後裔となる明清、ティムール・ムガル帝国、オスマン帝国、ペルシア、ロシアなどは現代に至るまで存続した大帝国であった。
上巻に引き続き大胆なモンゴルからの世界史像の転換を迫る。
モンゴル帝国に関するイメージが変わる!
本書『モンゴル帝国の興亡』は、漢語やペルシア語等、多言語文献を駆使してなされた最新のモンゴル帝国研究である。従来のモンゴル帝国研究が、いかに西欧中心史観、中華史観に基づいていたかがよくわかる。高校世界史で習ったことがボロボロと崩れていくようなある意味で心地よい感触を持たされる。
下巻ではクビライによる「大元ウルス」の建設と南宋の併合から帝国の終焉までを描く。いわゆる「元寇」のモンゴル側の事情や、クビライの世界経営の構想など、興味深い事実が多々散りばめられている。特に、帝国の経済システムに関する記述は衝撃的だった。モンゴル帝国というと、軍事的支配というイメージが濃厚だが、その実、経済と流通のコントロールを国家の機軸とし、陸だけでなく強大な海軍力を生かした一大ユーラシア交易圏が形成されていたという。
「一国史の集積としての世界史」が批判され、「グローバルヒストリー」の必要性が叫ばれるようになって久しいが、本書もまさにモンゴル帝国を軸とした「グローバルヒストリー」であるといえる。壮大かつとても面白い本なので歴史学に興味のある方には一読を薦めたい。
真の世界帝国
杉山氏の名著もこれが後編。クビライが帝位に就いて以降のこの大帝国の命運がこの内容だ。
想像を絶する程巨大になり過ぎたモンゴル帝国。しかも帝位の維持に本音と建前の差異が生じ、そのいずれに極端に傾いても崩壊して仕舞う瀬戸際に立たされて仕舞った世界帝国。普通モンゴル帝国と言うとチンギス・カンばかりが言及される物だから、著者はその子孫帝王クビライにこれ程論及した、近年殆んど初めての研究家だと云う訳だ。
大都を中心とするその大帝国の緻密な整備と構造についての記述は、クビライの偉大さに胸を打たずにはいられない。何より遊牧民出身の帝王が海洋交易路を徹底的に活用して大帝国を経営する等、凡人の想像を遥かに超えている。その上クビライ自信の支配力が強く及ぶ帝国東半には「大元」の国号まで付けた。「大元」、その意味する処を汲み取って現代語訳すれば「地球帝国」と言い換えても良いだろう。ジョン・レノンが歌にした夢は、実はモンゴルが七百年以上も先駆けて、最小限の軍事的犠牲のみを代償に実現して仕舞っていた事なのだ。何とスケールの大きい事か。
この本は必ずや上下両巻を揃え、おまけに日本経済新聞社から出ている「遊牧民から見た世界史」も併せ読む事を絶対にお勧めする。従来の西洋中心史観が、如何に人種や文化の差別に基いた小さな視野から眺めた物か、良く解るからだ。モンゴル再評価に、時は今来たれり。
ユーラシア帝国の夢と蹉跌
苛烈な内乱を克服して頂点を極めたクビライは、対南宋戦争により、ついに中華文明をも自己の手に握るのでした。カイドゥの乱をはじめとする中央アジアの混乱や東方三王家の反乱により帝国の政治的統合は動揺をきたしますが、クビライの政治力とモンゴルの同族意識により、イェケ・モンゴル・ウルスは緩やかな統合体としてユーラシア大陸の東西を一体化させ、大陸と海洋を結びつけたヒト・モノ・カネの回流運動が実現します。
かくしてユーラシアの政治的・経済的な統合を達成したモンゴル帝国ですが、クビライの後継者たちによる政治的対立と自然環境の変化に伴う生産力の低下により、帝国の一体性にも翳りがさし始めます。そうした中、諸ウルスは各地域における政治的・社会的な流れの中で自己を変容させ、解体していきます。そしてモンゴルの遺産の中から、諸民族は新たな政治的統合の土台を見出すことになるのでした。
下巻では、クビライの南宋征服から筆を起し、大元の混乱と北帰、そして各ウルスの解体に至るまでの流れを扱っています。クビライが創出したという大陸と海を結ぶ物流ネットワークと統合のシステムに重きを置き、彼の経綸によって世界の一体化が始まったと主張しています。
モンゴルの世界史的な意味合いについて、些か熱を入れ過ぎている気がしなくもありませんが、帝国的統合のさまざまな側面に光を当てるという意味で、やはり読むに値する本だと思います。
汎中央ユーラシアへの試み(下)
上巻がモンゴルの文明の破壊者という、悪しきイメージを打ち払う消極的なモンゴル再評価であったとすれば、それに続く本書は、そこから反転攻勢して、モンゴルが世界の歴史に与えた創造的なもの、新しく作ったものを再評価していく積極的な内容であると言えるでしょう。範囲としては、クビライ・カンの治世から、モンゴル帝国の崩壊、そしてその後を含んでいますが、主に前半のクビライ・カンの作り出したシステムの動向に目が向けられています。彼の作った体制がどのようなものでどんな性質があったのかが本書の実際の主題であると言ってもいいように思います。そこの描かれている内容は、当に驚くべきであります。著者の謂いでは、クビライという人間がその後の歴史を作ったかのようです。大元ウルスの経済システムの説明などは、俄かに信じられないほど精密で、高度な経済政策が元では行われていたことが示されており、今まで聞いたこともない話ばかりでした。他の一般書では触れられても申し訳程度であり、全体として見られなかったものが、すわ全貌を現せばここまでの巨大な物体であったとは驚嘆です。しかしこれも、著者が打ち出している歴史への新機軸の主要であってもすべての要素ではありません。著者の視点はもっとマクロです。そのひとつに元寇への言及があって、弘安の役の江南軍が実は棄民船団であったなどという見解を目にしたときは、驚きと衝撃と共に著者の慧眼に感動したものです。 確かに視点がマクロすぎてちょっと細部が甘いのではないかと思わされたり、モンゴルに対する評価が過分に過ぎるのではないかと思わされるところが、玉に瑕ではあります。しかし、今までの歴史へのアンチテーゼとして、これほどまでに明確に為される歴史観の転換は十分に必要なことであると感じました。
講談社
モンゴル帝国の興亡〈上〉軍事拡大の時代 (講談社現代新書) 遊牧民から見た世界史―民族も国境もこえて (日経ビジネス人文庫) モンゴルが世界史を覆す (日経ビジネス人文庫) 元朝秘史〈上〉 (岩波文庫) 元朝秘史〈下〉 (岩波文庫)
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