間違いだらけの教育論 (光文社新書)



間違いだらけの教育論 (光文社新書)
間違いだらけの教育論 (光文社新書)

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結局何をどうすればいいの?
 現代日本の課題や立場を考えるとき、教育というのは重大な意味を持つことになってくるわけだが、これに関しては大変な量の議論や主張がなされている。本書はこのうち、最近著名な斉藤孝やヤンキー先生、夜回り先生たちの主張を批判・検討して、独自の主張を展開していくという作りのようである。
 一応筆者の立場は冒頭のヘレン・ケラーの例などを通じて断片的に述べられているのだが、どうもいま一つ本書だけからではその体系だった考えや具体的な提案が見えてこない。それで、とにかくこれらの論者の主張をいささかしつこいまで批判、論難し、こき下ろしていく。
 念のために言っておくが、これらの論者と諏訪氏のどちらかが正しいとか間違っているという以前の問題である。どちらも優れた点や課題があって、突き合わせ、議論して全体としてよりよい方向を目指せばよいのだが、どうも揚げ足取りばかりの一冊という印象はぬぐえない。
 結局何が問題で、我々はどんな教育をすればよいというのだろうか。



それなりに読めるが・・・
本書はメディアに取りざたされている教育関係者、及びその教育言説に対して「現場を知る教師」の立場から批判するものである。著者の語り口は冷静で、批判対象がいかに間違っているかを客観的に分かりやすく示している。ここで批判されている諸々の教育関係者の言説に、少しでも感銘を受けたという自覚がある方にとっては、この本は一読の価値があるだろう。本書の主旨はこうした大衆レベルでの教育言説を論破するという点にあり、それは概ね成功していると言ってよい。個人レベルでの批判とともに提出される著者の主張(教育における強制の不可避性等)も一応筋は通っている。

しかし注意しなければならないのは、本書で批判の対象になっている人物のほとんどすべてが、一般的な教育学者ではないという事実である(斉藤孝氏は教育学者だが、専門は主に身体論であり、著者が学ぶべきとしている苅谷剛彦氏は社会学者である)。

加えて、著者はニート・引きこもり及び<若者>の問題を単純化しているが、この問題は個人だけのものではなく、社会的な要因が大きく関わっていることはもはや常識である。

本書は教育論を扱っているが、専門的に教育論議をしている教育学者はほとんど考慮せずに論が進められていることから、教育を専門的に勉強している人はあまり知的刺激を期待しない方が良い。実際のところ、教育における強制の不可避性など少し考えれば誰でもわかる。だが教育に関わる日本の幼稚な言説をマシな方向へ向かわせる試みとしては、本書はそれなりの意味を持つと言えなくもない(もちろん売れればの話であるが)。

最後に、小林よしのり氏の推薦文は適切ではない。 こうした推薦文は、かえって本書の客観的価値を見えにくくする恐れがあるのではないか。

教育とは非合理的なもの
 本書に登場する教育論者に共通するのは、「潜在的に子供は学びたいという欲求を持ち、学ぶことに子供が自分なりの目標を持っている」ことを前提に教育を論じている、ということになろうかと思う。そうであるならば、教育者は憧れの存在であれば良いし、子供が自分なりに師を見つければ良いし、学力向上を第一義とすれば良いし、教育に市場原理を持ち込んでも良い。それで教育はうまくいく。

 しかし、現実の子供は、なぜ学ぶのか、なぜ文化や社会ルールを守る必要があるのかなど、生まれながらに理解していることはありえない。そこで学校教育は、ある種の強制力、言い換えれば暴力性(もちろんホントに暴力を振るう意味ではない)が必要になる。これを前提とするためには、教師は「えらい」存在である必要があり、またその権力を与えられる必然性がでてくる。

 著者はこれを「啓蒙」と表現する。すなわち知識の無いものに知識を受け入れる人間的変容を求めるのが教育であると。

 この視点が欠けているのが近年のゆとり教育であり、本書に登場する論者であると批判する。そして、教育とは非合理的で人間的営みそのものであり、本来しんどくて、曲がり道をゆくようなものであると論説している。

 そのとおりだと思う。教育に効率化、市場原理の導入を求めるのは間違いだと思う。



アノ人やコノ人の「間違い」をあられもなくえぐり出す
諏訪さんの本は初めて拝読しました。語り口は鋭く、現場を見てきた強さを感じます。

ここのところ教育論でもてはやされてきた、斉藤孝、陰山英男、義家弘介、渡辺美樹
といった面々を斬っていきます。既にそれぞれに懐疑的な目はある程度向けられて
きたとは思いますが、かなり広く受け入れられている彼らの言説に、一貫した視点から
まとめて斬り込んでいるこの一冊は、読み応えがありました。

たとえば斉藤孝の志向する教育対象は、既に学ぶ姿勢、学ぶ能力をもった人間ばかりが
想定されていて、その手前の段階(強制的に生きる手続き、マナーを仕込む段階)
のことを考えていないと分析します。

斉藤氏については、いいこと言ってる感じはするけど、なにか空々しい白々しい
感じもすると、私はずっと思っていました。優れた意見に相乗りするのは簡単なので、
「私も諏訪さんのように思っていたのだと思います」「言いたいことを諏訪さんが言って
くれました」とは軽薄には言いたくありませんが、自分の抱えていた違和感と重なる
部分はあったんじゃないかなと思います。個人的には、かなり納得しながら読めました。

社会の一員としての「個人」と、他の誰とも異なる存在としての「自己」を区別して
考えることによって、「個性尊重の教育」という一見理想的なフレーズがどう上滑り
するのかが見えてくるようになるようです。

単なる動物として生まれ落ちた子供を、上記の意味での「個人」に仕立て上げるための、
強制力としての教育の意義を繰り返し語る諏訪氏の主張には、今の風潮のもとだからこそ
耳を傾けねばならない必然性が大きいのではないでしょうか。

批判だけにおわらない名著
批判に終わっていたら買いませんでした。これは必読書。

勉強は何のため?成績のため?偏差値のため?入試のため?についてのひとつの答えがあります。




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